相続登記を長年放置すると大変

 司法書士の中村智子です。

 少し前のことですが、相続登記と住所変更登記の義務化を定める法律(※)が成立しました。

 相続登記については取得を知った日から3年以内、住所変更登記については住所変更日から2年以内に登記申請しないと過料の罰則がかされるようになります。施行期日は,まだ少し先(相続登記について公布後3年以内,住所等変更登記について公布後5年以内の政令で定める日)ですが、長年放置してこられた先代名義や先々代名義の不動産があれば、そろそろ本気で名義変更(相続登記)の申請を検討される必要があるかと思います。

 私が最近受託した相続登記は、先々代、大正時代に亡くなった方の名義のまま相続登記せずにいた不動産。相続人の中に依頼者の方が全く面識のない方がたくさんおられ、費用もかかるし、連絡方法もわからず今まで放置してきたが、自分が元気なうちにきちんと相続登記をして、子孫に安心できる不動産を残したい、との思いで一念発起。費用はいくらかかっても良いからきちんと相続登記したい、とのご依頼でした。

 家督相続(戸主一人が相続人)だったらよかったのですが、遺産相続。相続人調査をすると、出てくるわ出てくるわ・・・(失礼な言い方ですいません)。昔の方は一人で10人とか今では考えられない子だくさんだったり、養子縁組も結構あり、複雑。相続してから亡くなった方の子供さん、さらにその子供さんなど・・代襲相続、数次相続入交、生存しておられる法定相続人だけで45人おられました。

 依頼者の方とおつきあいのあるご親族はそのうち3分の1位の方のみ。残りの30人以上が全く面識がありません。その方たちに一連の経緯・不動産評価額・相続関係図・法定持ち分等を説明して任意の遺産分割協議に応じてもらえるのか、まずは打診。

 協力してくださる場合、書類に署名捺印(実印)の上、印鑑証明書も渡してもらわないといけません。面識のない人から実印押して印鑑証明書渡して欲しいという依頼にはなかなか容易に応じられないという方も多いと思われます。協力いただけない場合は、遺産分割調停申し立てか、又は時効取得による所有権移転請求訴訟をするしかないですね・・・と手続きをご説明し、法定相続人全員に内容を説明記載した関係書類を送付しました。

 色々なことがあり時間はかかりましたが、紆余曲折を経て、結果的に皆さん全員が依頼者の方にご協力してくださり相続分譲渡をしてもらい依頼者の方が全てを相続することになり、無事相続登記することができました。

 私も長年司法書士をしている中で相続人が何十人もいること、巻物みたいな相続関係図を作ることなども何度かありましたが、今回は久々に手ごわい案件でした。依頼者の方の何としても今回登記する、という強い意思と、関係者の方へ感謝をされる姿やご縁もあって相続人の皆様全員が気持ちよくご協力してくださったと感じます。依頼者の方が大変喜ばれて私も嬉しかったです。

 しかし、ほんとうに大変でした。この案件をとおして、あらためて「相続登記はお早目に!」という気持ちを新たにしてた次第です。。。放置期間が長ければ長いほど複雑になり費用も膨れ上がります。それでもできれば良い方で、相続人の中に行方不明者や判断能力の無い方がいたりして不可能になる、ということすらあります。  

 みなさま相続登記はお早目に!

 

 

 ※令和3年4月21日,「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)が成立(同月28日公布)。